1人が本棚に入れています
本棚に追加
四月のへんてこ
「ゆーふぉーって、カップ麺だったんだね!」
「あ、うん」
隣にコウメさんがいる。
これはデートだろうか?
なんて浮かれている場合ではない。
電話をもらってこうして二人でお出掛けしてる。
浮かれない方が難しいが。
「そろそろお昼だ。何食べる?」
「俺は何でもいいけど」
緊張で食欲が沸かない。
こういうときは食べやすいものがいい。
好きな人が隣にいるのだ、仕方がない。
「うどんとかどうかな?」
コウメさんを見る。
青ざめた顔をしていた。
そんなに嫌なことを言ったが?
「何してるのっ。逃げるよ?」
「はあ?」
「ラーメンもどきをその名で読んだら捕まるよ」
「警察がそんなことで?」
「改名部隊。捕まったら廃人になるらしい」
「え、はあ? まじか」
この世界は一体どうなったというんだ。
俺はコウメさんに引っ張られるままに駆け出す。
「おい貴様」
「逃げるな」
警棒を持った集団がやって来る。
俺たちは細い抜け道に出た。
さらに走る。
「逃げれたみたい」
「ああ」
「あ、ゆーふぉー」
「え、ええ」
「今日はゆーふぉー食べる?」
「別でお願いします」
「そっか、残念」
イタリア料理チェーン店でスパゲッティを食べた。
うどん、ラーメン、ゆーふぉーには関わらないようにしよう。
「キョウヤ、今日はありがとね」
「ああ」
「どうかした?」
今日の出来事がおかしくて意識が抜けるように疲れてしまった。
「いや」
「このまま騒動が続けば、私は新学期から問題なさそうだね」
「そうかも?」
「じゃあ」
コウメさんは去っていった。
幸福感と不安。
この痛みはなんだ?
最初のコメントを投稿しよう!