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首筋に当たる熱い感覚に耐えながら、篠宮は手を伸ばした。明るく彼らを照らすスタンドのコードを引き抜くために。
オフィスに現れた篠宮は二人きりだというのに礼儀正しい有能マネージャーの顔を崩さない。
「お呼びですか」
珍しいウイングカラーに蝶ネクタイ。タキシードのサテンの襟が柔らかく光を弾く。背広姿が多い篠宮だが時にはタキシードも身に着ける。艶のある黒は彼によく似合っていた。桂城は黙ってしばらくその姿を眺めていた。
正午を過ぎて眼が醒めて当然ながらベッドの隣はもぬけのカラ。
その味気なさといったら。
そんなことを考えている内に篠宮は冷たい声で告げる。
「御用がないようでしたら、失礼いたします」
「お前…なにか欲しいものはないか」
ふいの質問に、篠宮は言葉もなくまじまじと相手の顔を見つめてしまった。
桂城はデスクに軽く腰掛けたまま笑う。気まぐれに恋人に何か贈ろうとする癖は、篠宮も今まで充分に見てきた。しかし、その相手が自分になろうとは思ってもみなかった。
「金鎖なんかどうだ」
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