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 イメージと、あらぬ時に一番に目に入るとでも考えたのだろうか。それとも鎖に繋いでおきたいのかもしれない。  今度は篠宮が沈黙したが、やがて困ったような笑顔を浮かべる。 「いただけません」  桂城は正直にいぶかしそうに眉を寄せる。  なぜと問われる前に篠宮は答えた。 「…貴方から、もう充分にいただいていますから。身を飾るものでしたら…」  意味が分からず不思議そうな桂城の視線の中、篠宮の細い指がするりと蝶ネクタイを外した。  襟えりの高いウイングカラーに隠されていたのは、瑪瑙(めのう)の色。  細い首に撒かれた、鮮やかな情事の紅色。艶やかな微笑みに思わず絶句するのは桂城の番だった。                                END
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