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――好きになってもらうのが、こんな難しいなんて知らなかった。
幼い頃から憧れていたルスキニア皇家のレクス様。
皇帝陛下になられ、ますます女性から人気を得て、平凡な私には手の届かない方となった。
だから、持てる力のすべてを使って、好かれようと努力してきたけれど――
「クリスティナ。ここは俺の部屋だが?」
「はい。私でよければ、皇帝陛下のお仕事を手伝います」
猟犬に追われ、転んだ私を助けてくれた強くて優しい皇帝陛下。
その皇帝陛下の力になりたいと思うのは、当たり前のこと。
「お前に手伝える仕事はない」
「私はお茶をお出しできます! こう見えて歌もうまいんですよ?」
大好きな皇帝陛下のお力になりたい。
ただそれだけだったのに――
「遊ぶ時間が俺にあると思うのか」
愛情の欠片も感じない冷えたサファイアの瞳。
これは皇帝陛下の素の姿で、誰に対してもこうだった。
最初は、私を嫌っているのかと思っていたけど、【魅了】の魔法を使っても態度は変わらなかった。
――だから、私はこれくらいで負けちゃ駄目!
皇帝陛下の凍てついたハートを溶かして、私を大好きになってもらうんだから!
そのためなら、どんな手段だって使うわ。
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