12 愛され令嬢 ※クリスティナ視点

2/11
前へ
/266ページ
次へ
 ――好きになってもらうのが、こんな難しいなんて知らなかった。  幼い頃から憧れていたルスキニア皇家のレクス様。   皇帝陛下になられ、ますます女性から人気を得て、平凡な私には手の届かない方となった。  だから、持てる力のすべてを使って、好かれようと努力してきたけれど―― 「クリスティナ。ここは俺の部屋だが?」 「はい。私でよければ、皇帝陛下のお仕事を手伝います」  猟犬に追われ、転んだ私を助けてくれた強くて優しい皇帝陛下。  その皇帝陛下の力になりたいと思うのは、当たり前のこと。 「お前に手伝える仕事はない」 「私はお茶をお出しできます! こう見えて歌もうまいんですよ?」  大好きな皇帝陛下のお力になりたい。  ただそれだけだったのに―― 「遊ぶ時間が俺にあると思うのか」  愛情の欠片も感じない冷えたサファイアの瞳。  これは皇帝陛下の素の姿で、誰に対してもこうだった。  最初は、私を嫌っているのかと思っていたけど、【魅了】の魔法を使っても態度は変わらなかった。  ――だから、私はこれくらいで負けちゃ駄目!  皇帝陛下の凍てついたハートを溶かして、私を大好きになってもらうんだから!  そのためなら、どんな手段だって使うわ。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1217人が本棚に入れています
本棚に追加