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「では、おそばにいさせていただけませんか? なにかできることがあるかもしれません」
「邪魔だ」
「それは、私を意識して集中できないということですか?」
皇帝陛下の手を握り、整った美しい顔を見つめる。
私がかけた【魅了】の魔法の効果がある限り、この手を振りほどけないはずだった。
「……っ!」
魔法に抵抗しているせいで、皇帝陛下は頭痛がするらしく、額をおさえて険しい顔をする。
――素直になって私を愛してくれたら、苦しくないのに、どうして抵抗するの?
獣のように鋭い目が、私の手をにらむ。
「……軽々しく俺の手に触れるな!」
怒鳴り声と同時に空気が震え、そばの花瓶が割れた。
破壊音を聞きつけた侍女が現れ、悲鳴をあげた。
「きゃあっ! こ、皇帝陛下……。なにか、わたくしどもに不手際がございましたか?」
「うるさい……!」
強い精神力が【魅了】の魔法を破ろうとしている。
怒りに満ちた凶悪な目に、恐怖を感じて顔を青ざめさせたのは、侍女だけでなく、私も同じだった。
――すごく怖い。
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