12 愛され令嬢 ※クリスティナ視点

3/11
前へ
/266ページ
次へ
「では、おそばにいさせていただけませんか? なにかできることがあるかもしれません」 「邪魔だ」 「それは、私を意識して集中できないということですか?」  皇帝陛下の手を握り、整った美しい顔を見つめる。  私がかけた【魅了】の魔法の効果がある限り、この手を振りほどけないはずだった。 「……っ!」  魔法に抵抗しているせいで、皇帝陛下は頭痛がするらしく、額をおさえて険しい顔をする。  ――素直になって私を愛してくれたら、苦しくないのに、どうして抵抗するの?    獣のように鋭い目が、私の手をにらむ。 「……軽々しく俺の手に触れるな!」  怒鳴り声と同時に空気が震え、そばの花瓶が割れた。  破壊音を聞きつけた侍女が現れ、悲鳴をあげた。 「きゃあっ! こ、皇帝陛下……。なにか、わたくしどもに不手際がございましたか?」  「うるさい……!」    強い精神力が【魅了】の魔法を破ろうとしている。  怒りに満ちた凶悪な目に、恐怖を感じて顔を青ざめさせたのは、侍女だけでなく、私も同じだった。  ――すごく怖い。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1218人が本棚に入れています
本棚に追加