12 愛され令嬢 ※クリスティナ視点

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「お前は誰の手に触れている。俺がそれを許したか」 「あ……。も、申し訳ありません……」  皇帝陛下から手を振りほどくのではなく、私に離せと命じた。  それなら、【魅了】の魔法で自由を奪われていたとしても可能だ。  無意識でやっていることだろうけど、的確な判断だ。  ――手に触れただけで、怒られるなんて悲しい。 【魅了】していても、皇帝陛下に近づくのは難しかった。  魔力は多くないけれど、皇帝陛下は戦の天才。  それだけではなく、冷酷で容赦のない戦いぶりに、人々から冥王の血を引くと噂されるほど。  もし、【魅了】の魔法を使わず、私が不用意に近づいていたら、この場で命を奪われている。 「俺に用があるなら、補佐官を通せ」 「はい……」  私の目の前で扉が閉まり、侍女は震えながら、床に這いつくばって花瓶の破片を拾い集めていた。  あの美しいサファイアの瞳に、私たちは映っていない。 「ごめんなさい。私が皇帝陛下を怒らせてしまったせいだわ」 「いいえ。私の仕事ですから。お怪我がなくてよろしかったですわ」 
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