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皇妃様について、エルナンド様はそれほど問題だと思っていないようだった。
「さて。クリスティナ伯爵令嬢。皇帝陛下の部屋から離れていただけますか?」
笑顔を浮かべているけど、ここから誰も通すにはないようだ。
態度は優しげなのに、威圧感を感じた。
「も、申し訳ありません」
「いえいえ。こちらこそ追い払うような真似をしてしまい、申し訳ない。昔から、皇帝陛下には敵が多くて、そばに置ける人間は限られているのですよ」
エルナンド様は皇帝陛下から、もっとも信頼を得ている。
その理由は、幼い頃から皇帝陛下を守り、命を狙われた際には、自分が囮になったこともあるとか。
剣の腕はルスキニア帝国で一番で、皇帝陛下が頼りにするのも彼くらいだ。
――エルナンド様から嫌われたくない。嫌われてしまったら、皇帝陛下のそばに近寄らせてもらえないわ。
ぎゅっと胸の前に手を組み、魔女にお願いする。
――エルナンド様を【魅了】して!
私の中にいる魔女が赤い唇を舐め、獲物であるエルナンド様に【魅了】の魔法をかけた。
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