13 皇帝陛下の右腕

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 レクスは心を開かない皇妃に悩むようなタイプではなさそうだと思っていたけど、そうでもなかったらしい。 「それに、皇妃様がアーレント様とフィンセント様の剣術の師匠として、このエルナンドを指名したと皇帝陛下が知れば、感激なさるでしょう!」 「感激? そ、それはどうかしら?」  レクスが感激する姿なんて想像できない。 「皇妃様が自分を信頼してくださることなど、永遠にないと思っておりました……」  エルナンドは私に剣の先生をお願いされたことが、かなり嬉しかったようで、涙をぬぐっている。  政略結婚で嫁ぎ、夫は冷たく、皇宮の人間から毒を盛られ、人間不信に陥っていたユリアナは、エルナンドのことも信用できないと思っていたのだろう。 「える、つよい!」 「けん、ざくざく!」  アーレントとフィンセントも喜んでいた。  ――思いつきで言っただけだったけど、結果的によかったわね。  ホッとしていた私に、クリスティナがブツブツ呟く声が聞こえてきた。 「私が好かれないなんておかしいわ。どうして……手に入らないの……私が、私の……」
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