13 皇帝陛下の右腕

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 レクスの元へ行こうとした私の前に、クリスティナが立ち塞がった。 「皇妃様、お願いします! 私もご一緒させてください!」  私が答える前に、お断りをしたのはエルナンドだった。 「皇帝陛下が呼ばれたのは、皇妃様だけです。クリスティナ様。よろしければ、私と一緒に騎士たちの訓練をご覧になりませんか?」  騎士たちの訓練へ向かうエルナンド―ー微妙なタイミングで【魅了】魔法の効果が発動した。  デートのお誘いだと思うけど、騎士たちの訓練を見て、ロマンチックだとか、楽しいと思える令嬢はいない。   「鍛えられた騎士たちの剣技と新しい鎧は、見ごたえがあります」  一部のマニアックな人間なら、喜ぶだろう。  残念ながら、クリスティナはマニアックな趣味は持ち合わせておらず、困惑していた。 「もしかして、迷惑でしたか?」 「い、いえ……。う、嬉しいですわ! ぜひ、ご一緒させてください!」  皇帝陛下の右腕であるエルナンドの誘いを断れるわけがない。  クリスティナは私を気にしながら、エルナンドの手をとった。 「では、皇妃様。失礼します」  うやうやしくエルナンドは頭を下げ、クリスティナと去っていった。  今の私はクリスティナのことより――  ――問題はレクスよ!   どうして呼び出されたのかわからない。  もしかして、私がヘルトルーデだとバレたとか?  レクスの用事がなんなのか、まったくわからなかったのだった。
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