14 皇帝の望み

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 扉まで開けてもらっては、入らないわけにはいかない。  渋々、部屋の中へ足を踏み入れた。  背後で扉が閉まる音がした。  今の気分は強敵との戦いへおもむく戦士の気持ち―― 「……って眠ってるの!?」  待ちくたびれたのか、レクスは私を呼んだことなど忘れて眠っている。  その寝顔を見て、緊張感が消えた。  ――身構えたこっちがバカみたい。  忙しいレクスが、いつでも休めるように、部屋に大きなベッドが置いてある。  眠っていても、レクスの険しい顔は変わらず、眉間にシワを寄せている。   「なんの夢を見ているのかしら? 眠っている時くらい穏やかな顔をすればいいのに」  しかめっ面でも、美形(イケメン)なのは変わらない。  ベッドの中は難しい政治や戦術の本ばかりで、レクスの弱み、『年頃の男なら隠したいなにか』が見当たらなかった。  ――レクスの頭の中は戦うことだけなの?
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