14 皇帝の望み

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 まさかレクスが、大切に飾っているなんて思いもしなかった。 「家族……だから?」  父と兄を敵に回し、不遇な幼少期を送ったレクスが一番欲しかったもの。  ずっと手に入らなくて、いつか手に入れたいと思っていたものは、たったひとつだけ。  ――冷酷な男だって思ってた。でも、本当は違うのかもしれない。  本を片付けたら、部屋から出ていくつもりだったけど、レクスが起きるまで待つことにした。   「すごい本の量ね。どれだけ読んでるのよ」  枕元にそびえたつ本の塔を崩そうと手を伸ばし、棚に運んでは、また取りに行く。 「まったく! 読み終わったら、ちゃんと片付けなきゃ……!?」  本に手を伸ばした瞬間、レクスがごろんと寝返りを打ち、私の体をつかんだ。 「ひ……っ!」  大きな声が出そうになって、慌てて手で口を塞ぐ。  枕と間違えたのか、私の膝に頭をのせ、すやすや眠っている。  ――膝枕!? レクスに膝枕しちゃってるし!   落ち着くのよ、私!  今まで、幾度となく窮地をくぐり抜けてきた。
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