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「毎日、頭痛に悩まされているんだが、お前が近くにいると痛みがやわらぐ」
「それを確かめたくて呼んだのですか?」
大魔女を頭痛止め扱いとはいい度胸。
でも、私がヘルトルーデだとバレてないようでホッとした。
「それもあるが、手紙の礼をしたいと思っていた。なにか欲しいものはないか?」
――お礼!? そんな嬉しかったの!?
ますます、適当に書いたなんて言えなくなった。
「急に言われても思い付きませんわ」
「なにかあるだろう?」
「私の欲しいもの……」
「グラーティア神聖国に帰りたいという要望以外ならなんでも叶えよう」
レクスの瞳が、私の心を探るように見つめた。
ユリアナはレクスに『帰りたい』と言ったのだろう。
帰してしまえば、待っているのは別居か離縁である。
――二人の皇子を残したまま。
でも、アーレントもフィンセントも母親を必要としている。
それがわかるから、レクスはその望みだけは叶えてあげられなかったのだ。
「……そうですね。自由に図書室を使わせていただけませんか?」
「図書室か」
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