14 皇帝の望み

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 その手紙の中身を見たいわけがない。  だから、すぐに断った。 「いいえ。結構です」 「そうか」  クリスティナに返事を書いているのか気になったけど、なんとなく聞けずに黙り込んだ。  お互いなにを話していいかわからず、静かになった。  ――なんだか気まずいわね。  クリスティナのことになると、私も警戒してしまい、うまく話せなくなる。  気まずい空気を変えるため、パッとひらめいた言葉を口にした。 「レクス様はクリスティナと親しくしていらっしゃるのですね」 「クリスティナと親しい……それは……っ!」 「レクス様?」  レクスはひどい頭痛がするのか、痛みに苦しんでいた。 「大丈夫ですか!?」 「……平気……だ」  嫌な予感がして、かけられた魔法を可視化させる。  複雑に絡まった【魅了】魔法の糸が、レクスを縛りつけていた。  この糸を無理矢理切ったり、破壊すれば、レクスの精神や肉体を傷つけてしまう。    ――レクスは他の人の比ではないくらい【魅了】魔法を何度も使われている。  幻影系の魔法は精神に負担がかかる。
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