14 皇帝の望み

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 騙されやすい人間なら、あっさり幻影を受け入れられるけど、そうでない人間は抵抗し、レクスのように苦しむことになる。   「そうだな……。クリスティナと親しくしている」  レクスの返答は、魔法のせいだとわかっていても、なぜかイラッとした。  頭痛がおさまり、レクスは息を吐く。  ――【魅了】の魔法を解こうかしら?    一瞬、そんな考えが浮かび、すぐに思い直した。  なぜなら、皇宮の人々と違って、レクスには何重にも【魅了】がかけられている。  これを無理矢理どうにかしようとすれば、最悪な場合、廃人になってしまう。  クリスティナの魔法は容赦のないものだった。  難しいとはいえ、このまま、なにもせずに放置するのも面白くない。 「レクス様。少し触れてもよろしいですか?」 「俺に? かまわないが……」  戸惑うレクスの額に手を触れ、子供たちにかけたのと同じ守護魔法をかける。 【魅了】の魔法は解けなくても守ることはできる。  ――大魔女の(ヘルトルーデ)加護なんて、滅多に与えないんだから、感謝してよね。
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