15 令嬢のお願い

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「誤解されやすい皇帝陛下の代わりに、私が説明しているだけです。皇帝の補佐官ですので」    得意げにエルナンドは言ったけど、クリスティナは暗い表情をしていた。  ――また【魅了】魔法を使わなければいいけど。  レクスにかけた守護魔法に気づかずに、また【魅了】を使ったら、クリスティナはふたたび傷を負うだろう。   「皇帝陛下は皇妃様に会いたかったのですか?」  悲しげな表情を浮かべたクリスティナは、恋に苦しむ乙女そのものだった。  その姿は支えてあげたいと思わせ、【魅了】されてなくても心が揺らぐ。 「会いたくないなら、ここへはこない」  レクスは頭痛がするのか、額に汗がにじんでいる。 「そうですよね。皇妃様は皇帝陛下の大切な方ですもの……」  目を潤ませ、泣きそうになるクリスティナ。  気まずい顔をしているエルナンドは、クリスティナの恋の相談を受けているらしく、すべて察しているようだ。  ――エルナンドはいい人だけど、気をつけないと。クリスティナに【魅了】されて、好意を持ってるはずだし。
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