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私には【魅了の魔女】の顔に見えた。
「なんだ?」
「皇宮でパーティーを開いていただけませんか?」
レクスはクリスティナの意図がわからず、首を傾げた。
エルナンドが助言する。
「クリスティナ様はお別れのパーティーというか、思い出作りをしたいということでしょう」
「そうです。無理でしょうか?」
見るからにレクスは嫌そうな顔をしており、パーティーが好きそうではなかった。
でも、パーティーをしなかったら、クリスティナはスッポンのようにしがみついて皇宮から出ていかないだろう。
「わかった。パーティーが終わったら、皇宮から去るように」
それで終わりだと思っていた。
でも、クリスティナはそんな甘くはなかった。
「パーティーで私をエスコートしてくださいませんか?」
――レクスがクリスティナをエスコートする!?
そんなことをしたら、私とレクスが不仲だという噂を肯定するようなものだ。
せっかく、関係が改善されてきているのに、これでは逆戻りしてしまう。
「皇宮で過ごした最後の思い出にしたいんです……」
クリスティナは涙をこぼす。
「親しくなれた皇宮の人たちと別れるのは、とてもつらいです。皇妃様とお友達にもなれなくて……」
「皇帝陛下さえよろしければ、皇妃様のエスコートは、自分が代役を務めましょうか? クリスティナ様にとって、皇宮で過ごす最後の日。難しいお願いではありませんし、叶えてさしあげてはいかがですか?」
エルナンドが申し出て、レクスは断りにくくなった。
すべて、クリスティナの思惑どおりに進み、皇宮でパーティーを開くことになったのだった。
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