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二人が並んだ姿は微笑ましく、レクスの冷たい心もクリスティナなら溶かせそうだ。
――あれ? でも、レクスの冷たい心が溶けたなら、悪逆皇帝にはならないわよね?
未来でレクスは悪逆皇帝となり、今は無邪気な双子の皇子も冷酷な人間に成長した。
それを私は知っている。
――どういうこと?
考えるポーズをした私をレクスが見ていた。
「どうかなさいまして?」
クリスティナを送ったらと提案したのは、彼女と友達になるのを回避しただけでなく、レクスを私から遠ざけるためだ。
それがわかるのか、レクスはなかなか立ち去らない。
「ユリアナ。どういう心境の変化だ?」
私の態度の変化に、なにかあると察したレクス。
もしくは、ユリアナがなにかたくらんでいると考えたのか。
――やっぱり侮れない男。
レクスは私に背中を向け、クリスティナとともに去っていった。
妻なのに、それを黙って見送るしかない。
愛されない皇妃ユリアナ――夫婦としての愛情だけでなく、信頼さえも失っていたのである。
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