19 妻 ※レクス視点

2/10
前へ
/266ページ
次へ
「う、うーん……殺す……殺……私が……」  ――俺を嫌っていた妻。  毒を盛られ、殺されかけた時の夢を見ているのかもしれない。  ユリアナはうなされていた。 「恐ろしい夢を見ているのか?」  夢で殺されかけていても、どうにもしてやれない。  自分の妻をジッと見つめる。  金色にエメラルドの瞳を持つユリアナ。  彼女はグラーティア神聖国の王女である。  ユリアナとはお互い愛し合って結婚したわけではなく、完全な政略結婚だった。  権威のグラーティア神聖国、武力のルスキニア帝国を結びつける役目を果たすため、ユリアナは俺に嫁いできた。  ――初対面から嫌われ、にらまれていたな。  この結婚を勧めたのはエルナンドで、いつまでも馴染めないユリアナを一番気遣っていたのもあいつだ。  うまくいかない俺とユリアナの結婚生活に、エルナンドは責任を感じていたのだろう。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1243人が本棚に入れています
本棚に追加