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ユリアナは自分を気遣うエルナンドを信頼し、戦地にやるまでは、それなりに俺との会話もあった気がする。
エルナンドを戦地に向かわせた時、ユリアナが言った言葉を今も覚えている。
『あなたは私から多くのものを簡単に奪う恐ろしい人ですわ』
そう言ったユリアナの目は悲しみと憎しみ――そして、拒絶。
エルナンドがいなくなった後は、ほとんど顔を合わせることもなくなった。
「最近まで、ユリアナがなにを考え、どんな人間なのか知らなかったな」
俺たちの関係は、家族どころか夫婦と呼べるものではなく、ユリアナは命を狙われていることも言えなかったくらい距離があった。
ユリアナの顔を見ると、今は平和な顔で眠っている。
――ルスキニア帝国の権力を使い、政略結婚をした憎い皇帝だと言って、嫌っていたはずだが。
毎日、俺の耳に入る話はどうしようもないものばかりだった。
『ユリアナ様は皇帝陛下の気を引くために、みずから毒を飲んだ』
『結婚前に好きな相手がいたのではないでしょうか』
『皇帝陛下は残忍で冷酷な方だ。結婚を後悔しているのだろう』
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