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――妻から嫌われているとわかっていても、離婚だけはできなかった。
度重なる冷たい態度と蔑んだ目に愛されることを諦め、これ以上、不仲にならないよう距離を置いたのだが……
「家族か」
最近、子供たちからは絵を、ユリアナからは手紙をもらった。
その時だけは、頻繁に続いていた頭痛が消えた。
「朝はパンケーキ……蜂蜜たっぷり……むにゃ」
儚げな雰囲気を持っていたユリアナだが、今は緩みきった顔で、食い意地のはった寝言を言い、無防備な姿をさらして寝返りをうつ。
「俺の妻は、これくらい気が抜けているほうがいい」
いつも憎まれ、緊張して顔色をうかがわれているよりはマシである。
俺が部屋にきたら、追い返すかと思ったが、ユリアナは受け入れた。
『あなたと同じ部屋にはいたくありません。他の女性と仲良くなさったら?』
『可愛らしいご令嬢が、あなたを見つめていましてよ? あの方が新しいお相手?』
以前のユリアナなら、こうだった。
「女心は不可解だ」
どんな戦よりも難しい。
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