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体を起こし、妻と子が眠る姿を眺め、夜の闇を見つめる。
夜の闇に混じる金属音が遠くで聞こえた。
――雑音が多い。エルナンドだけでは、対応に困るかもしれんな。
皇宮に侵入者が忍び込むのは、これが初めてではない。
三人を起こさないように、そっとベッドから出た。
――命を狙われているのは、ユリアナだけではない。
自分がそばにいることで、ユリアナだけでなく、子供も危険だ。
部屋を出ると、すでにエルナンドが駆けつけていた。
夜気に混じる血の臭い。
「皇帝陛下。ここは自分が守りますので、部屋へお戻りください。せっかくの家族団らんです」
「名で呼べ。エルナンド。お前にはそれを許している」
「おそれ多いことです。皇帝になる前であれば、名前をお呼びできましたが、今となっては偉大なるルスキニア帝国の皇帝陛下でいらっしゃいます」
深く頭を垂れるエルナンドは、俺に忠誠を誓う護衛騎士にして、補佐官。
童顔だが、年齢は俺よりも二つ上で赤い髪と青瑪瑙の瞳を持つ。
そして、一度決めたら頑固で引かない。
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