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「他国から恨みを買いすぎて、結婚相手に不自由するくらい嫌われていましたからね。唯一、結婚を承諾してくれたのが、グラーティア神聖国ですし」
皇妃の地位を狙われるとは、俺もエルナンドも思っていなかったのである。
「お金をチラつかせて、やっとでしたからね!」
「おい。エルナンド。少しは遠慮してものを言え」
エルナンドはこういう男である。
正直すぎるくらい正直だ。
「皇妃様を狙ったのが、外部の暗殺者か、それとも皇宮内の者なのか、探る必要がありますね」
「ああ」
エルナンドはにやりと笑った。
血がついているせいで、不気味な笑みに見える。
「なんだ? 血をふけよ」
「最近の皇帝陛下は、優しくなられた」
「……自分ではわからん」
明るいユリアナに戸惑うことも多いが、不幸な顔をていた頃の彼女を思えば、今のほうがいい。
――少なくとも、夢の中のパンケーキで幸せな顔をする女ではなかった。
父と兄から疎まれ、死ねと言われた自分が、誰かを幸せにできるのなら、少しは……
「見つけたぞ。皇帝レクス」
――暗殺者か。
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