3 嫌われた皇妃

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 穏やかな国で育てられたユリアナが、戦で多くの血を流し、口数も少なく、冷たい男に嫁ぐという悲劇。  戦闘狂で残酷なレクスなんて、絶対お断りである。 「おかーしゃま、ちょこ!」 「あげりゅ!」  私が怖い顔で考えていたからか、アーレントとフィンセントが、乳母車から手を伸ばし、チョコレートを差し出していた。  大好きなお菓子をあげたら、私が笑顔になると思ったのだろう。    ――レクスはともかく、子供たちはすごく可愛いわ!  冷酷な皇子に成長するのを忘れ、二人をぎゅっと抱き締めた。  ぷにぷにしたほっぺに触れると癒やされる。  実は子供好きな大魔女(ヘルトルーデ)。  私の弟子は子供から育てた者がほとんどだ。  レクスに似ているけど、子供たちは天使のようで、あまりの可愛さに笑みがこぼれる。 「夕方になると風が冷たいわ。二人とも部屋へ戻りましょう」 「皇妃様。お待ちくださいませ」  私が二人が乗った乳母車を押すと、そばに控えていた若い乳母が慌てた。  たしか、彼女の名はハンナといったと思う。
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