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エルナンド様は額をおさえた。
頭痛――これは完全に【魅了】されていない証拠で、エルナンド様はいいなりにならないように、しぶとく耐えていた。
「鍵をいただけませんか?」
繰り返しお願いしてみる。
「鍵……。鍵は渡せません。……なぜ、鍵が必要なのです?」
エルナンド様の目が鋭く私をにらんだ。
私を怪しんでいる証拠だ。
――危険だわ。【魅了】が完全に解けたら、エルナンド様を利用できなくなってしまう!
それらしい嘘をつき、ごまかすしかない。
「その……。皇帝陛下はお忙しい方ですから、私が作った栄養満点な食事を召し上がっていただこうと思いましたの」
「食事は厨房の仕事です。皇帝陛下の口に入るものに関しては、決められた人間しか関わることを許されてません」
エルナンド様の低い声に背筋が寒くなった。
これが、皇帝陛下の右腕であるエルナンド様の本性。
彼が持つ高い忠誠心によって、【魅了】の効果が打ち消されている。
「悲しいですわ。私はエルナンド様から信頼されてないのですね……」
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