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「皇帝陛下は皇妃様をまだ愛してるの……」
激しい嫉妬心が生まれた。
今まで、周囲に愛されてきた私は、嫉妬心とは無縁だった。
そんな私が初めて嫉妬したのは皇妃様だけ。
「では、仕事がありますので失礼します」
忙しいエルナンド様は去っていった。
私の手にはエルナンド様からもらった花が一輪。
ぐしゃりと潰し、床に落とした。
それを靴底で踏み潰す。
『ユリアナ。どこまでも邪魔な女』
私の中に潜む魔女が表に出くる。
『私は【魅了の魔女】。なんの力も持たない女に負けるわけがないのよ』
花が可哀想だという気持ちより、早く皇妃様をどうにかしたいという気持ちのほうが勝った。
魔女は皇妃様の部屋へ向かう。
――ねえ、どうするの? 今、行っても皇帝陛下と皇妃様が仲良く話をしているだけで、みじめなだけよ。
『みじめ? 【魅了の魔女】と呼ばれる私が、あの弱々しい皇妃に負けるわけないわ』
すれ違う侍女や兵士を【魅了】し、咎められることなく、堂々と廊下を歩く。
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