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とりあえず一人、信用できそうな人間を見つけることができた。
――今のところ誰も信用できないわ。
ユリアナが自分で毒を飲んだって言ってたけど、おかしい。
周囲を見回す。
ユリアナはお茶の時間だったらしく、庭に用意されたティーセットは一人分だけ。
皇妃だというのに、誰一人としてそばにおらず、孤独な時間を過ごしていた。
カップが倒れているところをみると、お茶を飲んでいて、気分が悪くなったことがわかる。
自分で毒を飲んだなら、毒が入っていた容器がどこかにあるはず。
けれど――
「皇妃様。なにを探していらっしゃるのですか? お部屋にお戻りになられないのですか?」
「そのつもりだったけど……。毒が入っていた容器を探しているのよ」
「毒の入った容器ですか?」
「そうよ。自分で用意した毒を飲んだなら、この場に毒が入っていた容器が落ちているはずでしょ」
「それもそうですね。ここで死ぬと決めて毒をあおったなら、容器が残っているはずです」
毒の容器はなく、残っていたのはユリアナが口にしていたお茶だけ。
お菓子は手つかずだ。
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