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瞳の色に合わせた緑色のドレスで、ユリアナが好んだグラーティア神聖国のデザインである。
仕立屋が言うには、ドレスは絶対クラシカルなタイプで、グラーティア神聖国のものでなくてはならないとこだわりがあったのだとか。
「ルスキニア帝国のドレスは最新なのよね。それはそれで素敵だと思うわ」
アーレントたちに描いてもらった絵を額に入れていると、廊下から慌ただしく走ってくる足音が聞こえた。
ハンナが顔をしかめた。
「まあ、誰かしら。新人の侍女なら、言い聞かせなくてはいけませんね」
やってきたのは新人の侍女ではなく皇妃付きの侍女で、その慌てぶりから、なにか予期せぬことが起きたのだとわかった。
侍女は私にお辞儀し、ハンナを呼ぶ。
「ハンナ。話が……」
「皇妃様の前で礼儀がなっていないわよ」
「で、でも……」
ベテランのはずの侍女が動揺しており、ハンナはため息をつく。
「ハンナ。いいから、話を聞いてあげて」
「はい。失礼します」
私に気遣い、部屋の出入り口付近まで移動し、ハンナは小声で侍女と話す。
「なにがあったの?」
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