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「皇妃様のドレスが見当たらないの。舞踏会のために仕立てた緑のドレスがなくなっていて……」
「なくなった!?」
さっきまで冷静だったハンナも驚き、侍女を見る。
侍女は泣きそうな顔でうなずいた。
ハンナは侍女を問い詰めた。
「舞踏会は明日よ! どういうこと? 警備の兵士はなにをしていたの?」
「わからないわ。今、皇妃様が身に付けるものを揃えようと思って、侍女全員で部屋に入ったら、昨晩まであったのドレスが消えてたの!」
侍女はどうしていいかわからず、とうとう泣き出した。
ハンナも消えてしまったドレスの代わりを用意できるわけもなく、うろたえている。
「二人とも落ち着いて。ドレスはたくさんあるんだから、それでいいわ」
「でも、クリスティナ様は新しいドレスを着るのに、皇妃様が古いドレスを着るなんていけません!」
侍女は泣きながら言ったけど、ドレスにそこまでこだわってない。
「そうです。グラーティア神聖国のドレスは形が古く、せめて生地や飾りだけはと思って、華やかにしていただいたのです」
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