22 切り刻まれたドレス

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「この間、一緒にドレスを眺めていただろう? 仕立て屋に別のドレスを仕立てさせてある」  ――グラーティア神聖国のドレスが気に入らなかったってこと?  気が向いて訪れただけだと思っていたけど、私がルスキニア帝国のドレスにするかどうか、知りたかっただけなのかもしれない。  素直にルスキニア帝国のドレスを着てほしいと言えないレクス。  可笑しくて笑ってしまった。   「ありがとうございます。私のためにドレスを作っていただいて嬉しいですわ」  初めてレクスが口もとに笑みを浮かべた。  一瞬だけで、気づいたのは私だけだったかもしれないけど、破壊力はじゅうぶんだった。  ――レクスが喜ぶ姿が嬉しいなんて。  魔法使いと魔女より悪いのは、ルスキニア皇帝で間違いない。  大魔女の心を奪えたのは、今まで誰一人としていなかったのだから。
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