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舞踏会当日――
グラーティア神聖国風の緑のドレスではなく、レクスが仕立てたルスキニア帝国風のドレスが用意された。
それに合わせたアクセサリーと靴も揃えられ、侍女たちはレクスの行動に驚き、大騒ぎした。
「着るものすら、無関心だった皇帝陛下が、こんな配慮ができるなんて奇跡です!」
「おお! この奇跡に立ち会えたことに感謝します」
――いやいや、おおげさすぎるでしょ?
呆れ顔で侍女を眺めていたけど、彼女たちの真剣な顔におおげさというわけでもなさそうな気がしてきた。
――今までどれだけ無関心だったのよ。
レクスの殺風景な私室は、戦術の本と政治の本ばかりだったのを思い出し、そうかもしれないと納得した。
そのレクスが用意したドレスを着るため、今日の昼食はスープだけで、ウエストは侍女の宣言通りギュッと絞られた。
「こんなにウエストを絞られたら、なにも食べられないわ」
準備が整った私は、侍女に付き添われ、廊下を歩く。
「皇妃様、舞踏会はダンスを楽しむ場ですよ」
「焼き菓子とかチョコレートが並んでるって、ハンナが教えてくれたじゃないの!」
「あーれ、ちょこ!」
「ふぃんもちょこ!」
私だけでなく、子供たちも楽しみにしていた。
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