3 嫌われた皇妃

9/9

1199人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
「ハンナ。このことは秘密にしてもらえるかしら? 毒が入っていた容器が、ただ見当たらないだけかもしれないし、大騒ぎしたくないの」 「はい。もちろんです」  もし、犯人がレクスならハンナを口封じに殺してもおかしくない。  私の記憶にあるのは、レクスの生意気な顔である。  年長者で大魔女の私に、まったく敬意を払わなかったレクス。  思い出すだけでも腹が立つ。  ――でも、子供たちを残して、ここから去るのも見捨てるみたいで嫌だし。  アーレントとフィンセントの瞳は期待で目がきらきらしていた。  今まで離ればなれだった母親が、一緒にいようと言ったからか、二人は笑顔で嬉しさを隠しきれてない。  ――不本意だけど、この子たちのためにレクスの妻でいるしかない。  すでに皇宮内はユリアナではなく、クリスティナを妃に望んでいたけれど、私は子供たちを見捨てられず、ユリアナとして残ることにしたのだった。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1199人が本棚に入れています
本棚に追加