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「ハンナ。このことは秘密にしてもらえるかしら? 毒が入っていた容器が、ただ見当たらないだけかもしれないし、大騒ぎしたくないの」
「はい。もちろんです」
もし、犯人がレクスならハンナを口封じに殺してもおかしくない。
私の記憶にあるのは、レクスの生意気な顔である。
年長者で大魔女の私に、まったく敬意を払わなかったレクス。
思い出すだけでも腹が立つ。
――でも、子供たちを残して、ここから去るのも見捨てるみたいで嫌だし。
アーレントとフィンセントの瞳は期待で目がきらきらしていた。
今まで離ればなれだった母親が、一緒にいようと言ったからか、二人は笑顔で嬉しさを隠しきれてない。
――不本意だけど、この子たちのためにレクスの妻でいるしかない。
すでに皇宮内はユリアナではなく、クリスティナを妃に望んでいたけれど、私は子供たちを見捨てられず、ユリアナとして残ることにしたのだった。
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