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「グラーティア神聖国では身を清めるのに水を使われると、ユリアナ様がおっしゃられていたのですよ? ですから、水風呂をご用意しました」
それは儀式かなにかの時だとわかっているはずだ。
それなのに、侍女たちはくすくす笑っているだけで、お湯を運ぶ気はないようだ。
「そう。それでは、水で身を清めることにしましょう」
「え? それはどういう……?」
私の反応が思っていたのと違っていたらしく、侍女たちはキョトンとした顔をした。
「ユリアナ様!?」
「まさか、この冷たい水の中に入るのですか?」
「そうよ」
うろたえる侍女たちに笑顔でうなずいた。
「本気……?」
「う、うそ……。だって、冷水よ?」
動揺する侍女たちを無視し、浴室の扉を閉め、鍵をかけた。
一人になったのは魔法を使うためである。
「あんな動揺するくらいなら、最初から嫌がらせしなければいいのに」
大魔女の私にとって、水をお湯にするくらい造作もないこと。
スッと手を浴槽に向ける。
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