1198人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
助かったと思いながら、目だけを動かし、足音の主を見上げる。
足音の主を目にした瞬間、自分の体温が一気に下がった気がした。
――皇帝レクス!
よりにもよって、第一発見者はユリアナを苦しめた最低な男。
ユリアナの夫のレクス。
自分の妻を見ているはずなのに、彼の目からは、ぬくもりをいっさい感じない。
――って、待ってよ。なぜ、レクスが生きてるの? ほとんど相討ち状態だったけど、倒したはず。
レクスはサラサラの金髪にサファイアの瞳を持ち、皇家の宝に数えられるくらい整った顔をした美形だ。
気のせいじゃなかったら、私が知っているレクスより、ずっと若く見える。
そのレクスの近くで、可愛い双子の幼児が目に涙を浮かべていた。
「お、おかーしゃま……」
「うわあああん」
乳母に抱き抱えられ、泣き出す双子の赤ん坊。
金髪にサファイアの瞳をしており、レクスの容姿とそっくりである。
――もしかしなくても、この双子は冷酷で残虐だと言われていた皇子、アーレントとフィンセント?
最初のコメントを投稿しよう!