5 皇帝陛下、夜の訪れ

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 双子はよくわかってないみたいだけど、私と一緒になにかやるのが楽しみらしく、喜んでいる。 「二人はまだ字が書けないだろう?」 「絵だけでも、じゅうぶん素敵な手紙になりますわ」  自分が育てた弟子から、私の似顔絵をもらった時は嬉しかった。  それと同じだと思う。 「俺からの用件は以上だ」 「そうですか」  私からの用事はゼロなため、これで会話終了だ。 「そっちから、なにか言いたいことはないのか?」 「ありません」    言いたいことは山ほどある。  でも、レクスが妻を信用できないと思っているうちは、なにを言っても無駄だとわかった。  ――まずは友好的な関係になり、会話をするところから始めないと!  会話からうまくいかないのでは、夫婦以前の問題である。  気づくと、まだ扉の前にレクスが立っていた。 「あら。まだいらっしゃったのですか?」 「もう戻る」 「はい。おやすみなさいませ」  話すだけ話して、レクスは『おやすみ』も言わずに出ていった。    ――なにか言いたそうな顔をしてたけど、なんだったのかしら?
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