5 皇帝陛下、夜の訪れ

7/7

1197人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
 今も昔もよくわからない男だ。  レクスがいなくなると、子供たちは眠るどころか、目がさえて元気いっぱいになり、『ルスキニア帝国戦術書』を持ち上げた。 「おかーしゃま!」 「こりぇ!」  うやむやにしようと思っていたのに、しっかり覚えていた。  ――強くなるのは賛成だけど、将来が心配だわ。  ルスキニア帝国の皇子ともなると、命を狙われる立場になるし、鍛えておいて損はない。  でも、アーレントとフィンセントは冷酷で残虐な皇子に成長し、私の弟子たちと戦って、命を落とす未来が待っている。  ――弟子も大切だけど、この二人も助けてあげたい。 「いたい?」 「おかーしゃま、いたい?」   私を思いやるアーレントとフィンセントを見て、未来を変えられるはずだと思えた。 「そうよ! 私が二人を優しくて強い皇子に育てればいいのよ!」  レクスに子育てを任せなければいいのだ。  二人をぎゅっと抱きした。  ――この子たちだけは守ってみせる。  誰も私を信用しない孤独な皇宮。  それでも、私は悲しい未来を変えるつもりでいた。  私を慕ってくれる子供たちのために――
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1197人が本棚に入れています
本棚に追加