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今も昔もよくわからない男だ。
レクスがいなくなると、子供たちは眠るどころか、目がさえて元気いっぱいになり、『ルスキニア帝国戦術書』を持ち上げた。
「おかーしゃま!」
「こりぇ!」
うやむやにしようと思っていたのに、しっかり覚えていた。
――強くなるのは賛成だけど、将来が心配だわ。
ルスキニア帝国の皇子ともなると、命を狙われる立場になるし、鍛えておいて損はない。
でも、アーレントとフィンセントは冷酷で残虐な皇子に成長し、私の弟子たちと戦って、命を落とす未来が待っている。
――弟子も大切だけど、この二人も助けてあげたい。
「いたい?」
「おかーしゃま、いたい?」
私を思いやるアーレントとフィンセントを見て、未来を変えられるはずだと思えた。
「そうよ! 私が二人を優しくて強い皇子に育てればいいのよ!」
レクスに子育てを任せなければいいのだ。
二人をぎゅっと抱きした。
――この子たちだけは守ってみせる。
誰も私を信用しない孤独な皇宮。
それでも、私は悲しい未来を変えるつもりでいた。
私を慕ってくれる子供たちのために――
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