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私になにをしても効果ないと悟ったのか、侍女たちは少しだけおとなしくなった。
さりげない嫌がらせは継続中で、午後のティーポットに入っていたのはお湯ではなく、水だった。
文句を言うだろうと、期待して待っている侍女に気づいたけど、あえて無視した。
私が文句を言えば、文句を言われたと大騒ぎするに決まってる。
――冷たいなら、温めればいいだけよ。
魔法を使って温め、白い湯気が昇るお茶をカップに注ぐ。
冷めていたはずのお茶が、ポットの中で温められたと誰も思わない。
ポカンとした顔で、侍女たちは湯気を眺めていた。
「あの湯気はなに?」
「誰がお湯を入れたの?」
「違うわ。水よ。確かに私は水を入れたわよ!」
侍女たちは熱いお茶に驚き、なにが起きたかわからず怯えていた。
私は余裕たっぷりな顔をして、侍女たちににっこり微笑んだ。
「注がれた紅茶がまるで血の色のようだわ」
香りのいい紅茶を口につけ、大魔女らしい感想を述べた。
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