6 あなた、侵入者ですよ?

2/8

1199人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
 私になにをしても効果ないと悟ったのか、侍女たちは少しだけおとなしくなった。  さりげない嫌がらせは継続中で、午後のティーポットに入っていたのはお湯ではなく、水だった。  文句を言うだろうと、期待して待っている侍女に気づいたけど、あえて無視した。  私が文句を言えば、文句を言われたと大騒ぎするに決まってる。    ――冷たいなら、温めればいいだけよ。  魔法を使って温め、白い湯気が昇るお茶をカップに注ぐ。  冷めていたはずのお茶が、ポットの中で温められたと誰も思わない。  ポカンとした顔で、侍女たちは湯気を眺めていた。 「あの湯気はなに?」 「誰がお湯を入れたの?」 「違うわ。水よ。確かに私は水を入れたわよ!」  侍女たちは熱いお茶に驚き、なにが起きたかわからず怯えていた。  私は余裕たっぷりな顔をして、侍女たちににっこり微笑んだ。 「注がれた紅茶がまるで血の色のようだわ」  香りのいい紅茶を口につけ、大魔女らしい感想を述べた。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1199人が本棚に入れています
本棚に追加