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それがよくなかったのか、侍女たちは震え上がった。
「ひっ! 血? あれは紅茶じゃなくて血なの?」
「お前たちを処刑してやるぞってこと?」
「た、助けて……!」
怖がらせすぎてしまったらしく、侍女たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「ちょっとした冗談だったのに……」
私の弟子なら、『ヘルトルーデ様の血の色は赤ですか? 緑ですよね?』なんて、面白い冗談を言ってくるところだ。
なお、私の血は赤で緑ではない。
「冗談が通じないのね」
がっかりだわと思いながら、紅茶を飲んだ。
お金持ちな国ルスキニアだけあって、いい茶葉を使っている。
「皇妃様。頼まれていた道具を持ってまいりました」
ハンナが紙と絵筆、黒の絵の具を持って庭に現れた。
でも、ハンナが用意できた絵の具の色は黒色だけだった。
「申し訳ありません。絵の具が欲しいと侍従にお願いしたのですが、黒色しかいただけませんでした」
「そう……」
ハンナは頑張ってくれたほうだ。
私の望みを皇宮の侍女や侍従は叶えたくない。
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