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「子供の頃、一度も可愛いと言われたことがなかったな」
レクスは気にしていないようだ。
「そんなことないです! 私が初めて見た皇帝陛下は、とても美しくて近寄りがたい存在でした」
頬を赤らめ、クリスティナはレクスに言った。
「ですから、こうしてお話できるだけで、夢のよう……」
感情が高ぶったせいか、クリスティナは泣き出した。
レクスは困った顔をしていたけど、慕われて嫌な気分になる人はいない。
「申し訳ありません。皇妃様の前でこんな醜態を見せるつもりはなかったんです」
「気にしていませんよ。それで、クリスティナが私に会いたかった理由は、なにかしら?」
「はい! 先日、皇妃様からいただいたドレスのお礼を言いたくてまいりました!」
さっきまで泣いていたクリスティナ。
あの涙はどこへいったのか、元気よく答え、緑のドレスをひらひらさせて、私の前でくるりと回ってみせた。
皇宮がクリスティナのために作ったドレスは、サイズもちょうどよく、色も明るい緑色。
まるで、春の花のよう。
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