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たいていの者は神殿を恐れ、使用しないのだけど……
「どちらで怪我をされたのかしら?」
私がクリスティナに尋ねると、令嬢たちはおしゃべりをやめた。
「これは、その……。突然、怪我をして……」
クリスティナは言葉を濁し、はっきり答えなかった。
――【魅了】の魔法を皇子に仕掛けて反撃したなんて言えば、牢屋行き。言えるわけないのよね。
「そう。早く治るとよろしいわね」
残念ながら、私の守護魔法によって反撃された傷はなかなか治らない。
弟子に『師匠の血の色は緑ですか?』とよく言われた。
二度と攻撃しないと思い知らせるため、傷が一度塞がっても、同じ場所に新しい傷が、繰り返しできるようになっている。
呪いを受けたのと同じ状態である。
一定の期間が経てば、傷は綺麗に治るけど、その代わり、治癒魔法はいっさいきかない。
治癒するまでの期間、痛みに苦しむだろう。
罪人にふさわしい魔法である。
「この傷はなかなか治らないようです……」
治らないとクリスティナもわかっている。
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