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それをわざわざ私から、なにを頼めというのだろう。
「怪我が治るまで、皇宮に滞在させていただきたいのです」
「え? 皇宮に滞在?」
『愛されない皇妃』ユリアナから、すべてを奪うクリスティナ。
夫に近づき、子供たちに慕われ、気づけばユリアナは孤独になっていた。
――未来を知っているからこそ、すぐに返事ができない!
言葉に詰まる私を見て、貴族令嬢と侍女たちが笑っていた。
「明るくて優しいクリスティナ様に、皇帝陛下が奪われると思っていらっしゃるのよ」
「きっと、そうでしょうね」
「ユリアナ様。わたくしたちからもお願いしますわ。クリスティナ様の滞在を許可してくださいませ」
「医術師たちの治療が必要だと思いますわ」
令嬢たちは口々に、クリスティナの皇宮滞在を望んだ。
悪意と嘲笑が混じる中、アーレントとフィンセントがぎゅっと私のドレスを握りしめた。
――子供たちを奪われるわけにはいかないわ!
クリスティナが妃になれば、皇帝一家は大魔女ヘルトルーデと弟子たちに倒され、死ぬ運命にある。
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