9 決意

9/10
前へ
/266ページ
次へ
 皇帝が決めたなら、私に止められるはずもなく、ただ傍観するのみ。 「ありがとうございます! レクス様……あっ、いえ、皇帝陛下」  クリスティナが明るい表情で微笑み、周囲の令嬢たちと喜び合う。 「おめでとう。クリスティナ様!」 「皇宮に部屋をいただけるなんて、すごいわ!」  頬を染め、両手をぎゅっと胸の前で握りしめるクリスティナは本当に可憐で、純真な少女に見えた。 「あの……。皇妃様。私が皇宮に滞在しても本当によろしいのでしょうか?」 「レクス様が認めたなら、私が反対する理由はありません」 「そうではなく、皇妃様から認めていただきたいのです」  ――妻公認の愛人になりたいということ?    図々しいにもほどがある――この瞬間、私の堪忍袋の緒がブッチーンと切れたのがわかった。  姿はユリアナであっても中身はヘルトルーデ。  しかも、クリスティナが魔女なら、魔法で反撃されたと気づいているはずだ。  高度な守護魔法に警戒せず、私を挑発するとはいい度胸。    ――お望みどおり、その挑発に乗ってあげましょう。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1206人が本棚に入れています
本棚に追加