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体から毒が消え、医術師が追加で、私に飲ませようとした薬をお断りした。
「ユリアナ様?」
しばらく自力で動けないはずだった皇妃が立ち上がり、土を手ではらい、優雅に微笑む。
全員が驚いた顔をしていた。
「体を支えてくれてありがとう。もう平気よ」
体を支えていた侍女が離れ、レクスが私を見る。
私を見つめる冷たいサファイアの瞳は、未来でも変わっていない。
――いいえ。もっと酷薄としていて冷たかったわ。
「おかーしゃま、げんき?」
「いたいの、なおった?」
「すごく元気になったわ」
レクスはともかく、アーレントとフィンセントの双子皇子は無邪気だ。
けれど、この愛らしい顔に騙されてはいけない。
ルスキニア帝国の皇帝一家は人々を虐げ、暴虐の限りを尽くした悪党どもだ。
「おかーしゃまぁ!」
「だっこ、して!」
――悪党なのよ! 悪党……くっ、可愛い!
人々が苦しむ姿を楽しみ、退屈しのぎの余興として処刑する恐ろしい皇帝一家のはずが、今は可愛い幼児である。
つい、可愛さに負けて抱っこしてしまう私。
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