10 夫は私を助けない

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「庭師に気遣うなんて、今までのユリアナ様からは考えられないわ。使用人に冷たかったのに……」 「お茶会の時、助けられた侍従は泣いてお礼を言っていたわよね」 「当然よ。あのままだったら、侍従はどうなっていたかわからないわ」  お茶会以来、皇宮の使用人たちの態度はかなり変わった。  クリスティナの【魅了】の魔法は、人の心の隙を利用しているだけで、そこに理由がない。  魔法の効果が薄れたら、根拠のない好意は簡単に消えてしまう。  ――皇宮の人々がユリアナを歓迎していなかったから、その心の隙を狙ったのよね。  最初からユリアナをレクスとルスキニア皇宮が受け入れていたら、魔女を呼び込むこともなかった。  【魅了】の魔法に影響されなかったアーレントとフィンセントは、幼さゆえの無垢な心と母親を純粋に慕う心があったから、影響されずに済んだ。  けれど、ギリギリだったと思う。  ユリアナが子供たちを遠ざけていたことを考えると、いずれ魔女は寂しい心ににつけこんで、【魅了】の魔法を使っていたはずだ。  ――子供たちの心まで操るなんて、絶対に許せない。  
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