10 夫は私を助けない

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「あーれ。おかーしゃま、いちばん、しゅき」 「ふぃんも! いちばん!」  フィンセントは食べていたケーキを私にくれる。 「お母様も二人が一番っ……」 「ほう? 俺は何番目だ?」  二人を抱き締めようとした手は空振りした。  椅子から二人を抱きあげ、私から幸福を奪った悪どい男がいた。 「まっ、まあ! 皇帝陛下!」 「椅子をご用意して!」  庭園の木の陰から突然現れたレクス。  気配を消して近づくなんて卑怯だ。  温度を感じないサファイアの瞳が私を見下ろす。   「おとーしゃまも、しゅき」 「けん、ざくぅ! つよい!」  アーレントとフィンセントはレクスの首に抱きつき、嬉しそうな顔をしていた。  レクスは子供たちに尊敬されているようだけど、お手本にしてはいけない人間である。 「それで、俺は何番目だ?」 「順位をつけるものではありませんわ……」  しつこく聞いてきたレクスから目をそらした。    ――私になんて答えろと!?  今まで、レクスはクリスティナとイチャイチャしてたくせに、なんて都合のいい男だろうか。
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