10 夫は私を助けない

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 ――え? なに? それだけ?  そして、沈黙。  話題がなく、気まずいのに、レクスは頬杖をついて、眠そうにうとうとしていた。  ルスキニア帝国は戦の天才であるレクスが即位し、領土を拡大していった国である。  だから、レクスが多忙であるのはわかるけど、まともな夫婦の会話もない状況だ。    ――私のほうから、レクスを無理矢理、叩き起こして会話するわけにもいかないし、なんだか気まずいわね。 「おとーしゃま、ねんね?」 「とんとん、する?」 「二人ともお父様は疲れているみたいだから、静かにしてあげましょう」  アーレントとフィンセントはつまらなさそうな顔をした。 「静かにするゲームよ。勝った人にはチョコレートをあげましょうね」  子供が大好きなお菓子はチョコレート。  とても甘いから、滅多にあげられない。  だから、子供たちにとって特別なお菓子なのだ。  アーレントとフィンセントは、慌てて口に手をやって、声を出さないようにする。  このまま、レクスが起きるまで、静かな時間が続くはずだった。  けれど――
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