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「きゃあああ! 誰か兵士を呼んで!」
「クリスティナ様が犬に追われているわ」
「猟犬よ!」
遠くから侍女たちの悲鳴が聞こえ、騒ぎの元凶が近づいてきた。
「皇帝陛下、助けてくださいませ!」
クリスティナは悲鳴を上げて、皇妃の庭へ逃げてきた。
その背後には黒い大きな犬が迫っている。
猟犬は森番が世話をしており、ふだんは主人の命令に従う賢い六頭の犬たちだ。
なにをしたのか、犬は怒り、クリスティナに唸り声をあげている。
犬の目を見ると、正気を失っていた。
――もしかして、クリスティナは【魅了】の魔法を犬に使って操っているの!?
人より動物のほうが、魔法にかかりやすい。
正気を失い、【魅了】で操られた犬が、クリスティナとともにこちらへ走ってくる。
「アーレント、フィンセント!」
とっさに子供たちをかばう。
レクスは目覚め、頬杖をついたまま、冷たいサファイアの瞳を犬に向ける。
犬は私とクリスティナに両方同時に襲いかかり、牙をむき出しにし、噛みつこうとしていた。
そばのレクスを見ると、氷のようなサファイアの瞳が私の姿を映していた。
――レクスは私を助けない。
私は愛されていないのだから。
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