1 愛されない皇妃

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「ユリアナ様。どうかなさったのかしら……?」 「乳母に任せきりだったのに、アーレント様とフィンセント様に触れられるなんて」  レクスとクリスティナも驚いた顔で私を見る。 「レクス様。騒がせてしまってごめんなさい。栄養剤と毒薬を間違えて飲んでしまっただけですの」  侍女たちがざわめき、医術師は戸惑う。  私は気づいていた。  侍女たちはユリアナを『皇妃』と呼ばず、侮っていること。  医術師たちは解毒薬ではなく、毒の症状を緩和するだけの薬を飲ませたこと。  ――この皇宮にユリアナを皇妃として、敬う者はほとんどいない。  皇子二人が大切で、ユリアナは用済みとばかりに扱われている。  その理由は―― 「皇妃様。お部屋まで付き添わせていただいてもよろしいでしょうか?」  クリスティナの親切な申し出に、周囲は笑顔になった。  こちらは毒を飲み、夫の気を引こうとした憐れな皇妃。  その一方で、優しく誰からも愛されるクリスティナ。  騒ぎを起こした後だから、なおさら両者の差は際立った。 「クリスティナ様はなんてお優しいの」 「陰気なユリアナ様に……ねぇ?」  皇宮の侍女たちはクリスティナを褒め称える。  伯爵令嬢でしかない彼女が、自由に皇宮を出入りできる理由はただひとつ。  いずれ、レクスの妻として、妃になることを望まれているからだ――
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