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犬に追いかけられて転んだクリスティナは、上半身を少しだけ起こし、上目づかいでレクスを見つめた。
彼女が自分になにを求めているかレクスはわからないようで、不思議そうな顔をしている。
「あ、あのっ、犬に驚いてしまって、足に力が入らず、立てないみたいです……」
レクスはやっと気づいたらしく、手を差し伸べた。
クリスティナは嬉々として、レクスの手を取り、立ち上がった。
「ありがとうございます。皇帝陛下に手を貸していただけるなんて、一生の思い出になります」
クリスティナはレクスに触れた手をぎゅっと握りしめ、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
可憐な乙女そのものである。
私のほうは、両腕にアーレントとフィンセントを抱き締めていた。
――レクスにお礼を言うタイミングを逃してしまったわ。
すでに向こうは二人の世界だろうし、邪魔する気はなかった。
「アーレントとフィンセントに怪我がなくてよかったわ」
「おかーしゃま。いぬ、いいこね?」
「きらきら、まほう、めっ!」
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