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でも、私は――
「レクス様。待ってください。犬は悪くありません」
「悪くない? 襲われただろう?」
「いいえ。犬はクリスティナのひらひらしたリボンを追いかけたのですわ」
「リボン?」
クリスティナのドレスの後ろに長いリボンが垂らされている。
私は子供たちをハンナに預け、犬に向かって両手を広げ、ゆっくりと近づく。
「その証拠に犬は私に危害を加えません」
「皇妃様! 犬に近寄っては危ないですわ!」
クリスティナが叫ぶ。
まだ犬は【魅了】されたままで、クリスティナの意のままだ。
魔法を解く気はないらしく、犬を使って、私に大怪我を負わせようとしている。
――我が犬に魔法は必要ないわ。
動物は魔女の忠実な下僕である。
下僕に魔法を使うのは三流の魔女のみ。
大魔女の名において、自我を失った犬に命じる。
――お前たちを大魔女の下僕とする。
犬の目を見つめて念じたなら、彼らの本能が働き、恐怖を察知する。
私に対する恐怖によって【魅了】の魔法が破壊された。
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