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長く生きている私だけど、私が知らない魔法が存在しているようだ。
「皇帝陛下。皇妃様は寛大でいらっしゃいますわ」
クリスティナが胸の前に手を組み、きらきらした目でレクスに言った。
「皇帝陛下は愛する妻ではなく、私を守ったのに嫌な顔ひとつされないなんて驚きましたわ」
――え? そうだった?
この時、私とハンナ、侍女たちは同じ顔をしていたと思う。
でも、クリスティナは勝手にそういうことにしてしまった。
「ありがとうございます。皇帝陛下の身に危険が迫った際は、私がお守りいたします」
「俺は……」
クリスティナはすばやく、なにか言おうとしたレクスの言葉を遮った。
「皇妃様は皇帝陛下を愛していないのですね」
しんっと静まり返り、レクスは否定せず黙り込んだ。
今までの夫婦仲は冷めきったものであり、過去を振り返れば、誰も違うとは言えなかった。
――私が愛の告白をすれば解決なんだろうけど、レクスに愛してるって言うの? 私がレクスに愛の告白なんかできるわけないでしょ!
心の中では二人の私が争っていた。
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